D’station Racing 第87回ル・マン24時間耐久レース レースレポート

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By Auto News on Jun 17, 2019 at 2:33 PM
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    D’station Racing
    Race Report – 2019.06.17

    星野敏のル・マン24時間への挑戦は
    洗礼を浴びるも貴重な経験を得る



    87th Le Mans 24 Hours Race

    June 9 – 16 2019
    Qualify : Class Pole Position Race : Retire

     D’station Racingのオーナーであり、ドライバーとしてさまざまなレースに参戦してきた星野敏には、夢があった。かつて、フェンシングで全日本選手権制覇、三度の世界選手権出場、世界と戦うべくオリンピックを志したが、日本のトップまで登りつめながらも、その夢は叶わなかった。しかし、モータースポーツでならばその夢を叶える舞台がある。ジェントルマンドライバーにとっての“オリンピック”、ル・マン24時間への出場だ。

     星野は夢を叶えるべく研鑽を積み、ル・マンでのカレラカップ出場、さらに2018年はドバイ24時間に出場し海外での経験を積んだほか、WEC第4戦富士に、D’station RacingとDEMPSEY PROTON RACINGとのコラボレーションというかたちで出場した。そのときは見事LM-GTE Amクラスのポールポジションを獲得する結果を残し、最終的に燃料給油時間のペナルティでレース結果を抹消されてしまったが、表彰台に登る活躍をみせた。世界への切符をつかむべく、DEMPSEY PROTON RACINGとD’station Racingとのコラボをふたたびル・マン24時間でも行うことが決まった。NEXUSグループ代表として多忙な日々を過ごすかたわら、星野の新しい挑戦が始まった。

     星野は4月16日、まず主催者であるACOフランス西部自動車クラブが指定するシミュレーターテストを受講。まずはこれをクリアした。

     そして、星野にとって長い6月が始まった。6月1日にふたたび渡仏した星野は、公式テストデーに臨むと、8時間のなかで少しずつフィーリングを確認していった。だが長い13kmものコースで、大半が公道であるサルト・サーキットは路面のミューも低く、今までの日本のコースのようにはいかない。星野は手探りで少しずつペースを上げ、レース本番で戦う手ごたえを掴んでいった。

    ■予選はポール! 星野も習熟を進める


     ル・マン24時間のレースウイークは1週間以上にわたる。6月9日から始まった公開車検から多くのファンが市内を埋めるなか、6月10日の公開車検2日目、星野はマッテオ・カイローリ、ジョルジオ・ローダのふたりのパートナーとともに写真に収まり、ミーティングなどをこなしながら、ついに走行開始となる6月12日を迎えた。この日は16時からフリープラクティスが4時間、そして22時から予選1回目が行われる。

     星野はプラクティスからステアリングを握ったが、この日のル・マンは雨がちで、プラクティス開始時はドライだったものの、長いサルト・サーキットだけに場所によっては雨が舞い始めた。そんななか、星野はポルシェカーブでわずかにラインを外してしまい、スピンを喫してしまったのだ。

     幸いグラベルもあったため、タイヤバリアに接触したものの、ダメージはボディサイドのみでふたたび88号車ポルシェはコースインすることができた。星野にとっても限界をつかむという点で、レースウイークのはじめに出たのは幸運だった。その後の予選1回目では、星野は規定の周回数をきっちりとこなし走行を終えた。一方、ステアリングを受け継いだカイローリは3分52秒454というタイムをマーク。初日を首位で終えた。

     迎えた6月13日の走行2日目。天候も回復し、現地時間19時から予選2回目が、そして22時から予選3回目が行われた。星野もステアリングを握りしっかりとサルト・サーキットの習熟を進めるが、そんななか予選3回目開始直後のタイミングを狙ったカイローリが、3分51秒439というタイムを記録。フィニッシュまでこのタイムを破るライバルは現れず、88号車ポルシェはLM-GTE Amクラスのポールポジションを決めた。

    「正直、こんなところにいていいのかというくらいの気持ちです。カイローリ選手の素晴らしい走りのおかげですが、このチームに加わることができたのが本当に幸運で、うれしく思っています」と星野は喜びを述べた。

     明けて6月14日は、走行はなくル・マン市内で恒例のパレードが行われた。今年はパレードの盛り上がりで進行が遅く、星野は少し待たされる身になったが、それでもいざパレードが始まってみると、ドライバーたちを讃える世界中のファンの声に星野は圧倒された。クラシックカーから下りた星野は、ファンにていねいにサインしながら独特の雰囲気を楽しんでいた。
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    LM-GTE Amクラスのポールポジションを獲得したデンプシー・プロトン・レーシングの星野敏/ジョルジオ・ローダ/マッテオ・カイローリ組とパトリック・デンプシー、星野のアドバイザーを務める藤井誠暢

    ■ル・マンの厳しさが星野に牙をむく


     いよいよ迎えた6月15日の決勝日。午前のウォームアップは走行を行わなかった88号車ポルシェは、15時のスタートに向けて雰囲気が高まるなか、グリッドに整列。この日は日本からD’station Racingの仲間たちも激励に駆けつけ、力を受け取った星野もチームメイトたちとともにグリッドに並び、スタート前の雰囲気を楽しんだ。

     スタートを務めたのはカイローリ。『ツァラトゥストラはかく語りき』が響き渡るなか、猛然とアクセルを踏み込んだ88号車はクラス首位を守り周回を重ねていき、開始から1時間というところでピットイン。星野の最初のスティントが始まった。だが、ル・マン24時間の厳しさが星野に牙をむく。

     星野は完走を目指したんたんと周回をこなしていくが、15時55分にアクシデントによるフルコースイエローが導入される。星野は冷静に無線でのカウントダウンを聞いていたが、本来減速を始めるべきタイミングの前に、目の前を走っていた56号車ポルシェが急減速。星野は避けきれず、スピンを喫してしまった。

     幸いこのスピンではダメージはなかったが、その後も走行を進めていくなかで、後方から速いクラスのマシンが続々と迫る。星野は慎重に避けていたが、今度は後方から来たマシンがわずかに星野のポルシェにタッチしてしまう。非常に些細な接触だったが、姿勢を乱した星野はクラッシュ。右フロントにダメージを負ってしまった。

     なんとかピットに戻ることができた星野は、ガレージでリペアを受け再コースインし、なんとか自らのパートをこなすと、ローダに交代した。しかし、当初陽があるうちに星野は規定のスティントの3分の2をこなす予定だった。ローダの走行の後、すぐに星野の担当がもう一度あったのだ。ゆっくり休んでいるわけにはいかない。また首位争いからは大きく後退してしまったが、それでもたたびコクピットに戻った星野は、先ほどよりも好ペースで周回を重ねていった。この調子でバトンを繋げば、悲願の完走も見えてくる。

     しかし星野に代わって12周目。ポルシェコーナーからカーティングに至る間に、後方からLM-GTE Proクラスの集団が迫ってきた。レコードラインを外し速いマシンを前に行かせていた星野だったが、強引にラインに入った64号車コルベットと接触してしまう。コルベットはバリアにクラッシュし大破。星野はなんとか立て直しコースに復帰したが、マシンにダメージを負ってしまった。コルベットのドライバーにはペナルティが科された。

     なんとか修復をこなした後、カイローリがステアリングを握りコースに戻ったが、やはり完調とはほど遠かった。チームは協議の末、レースには戻らないことを決めた。苦渋の決断ではあったが、ドライバーたちの安全を考えた決断は正しかった。

     24時間を走りきるという星野の思いは断たれてしまったが、長年夢見た舞台に足跡を記すことはできた。努力の人である星野は、この悔しさを糧にさらなる精進を誓った。今年スピリット・オブ・ル・マンという栄誉ある賞をうけたパトリック・デンプシー共同オーナーがそう語ったように。
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    ル・マン24時間のドライバーズパレードに参加したデンプシー・プロトン・レーシングの星野敏
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    ル・マン24時間に挑んだ星野敏

    QUOTE:
    星野 敏

    Satoshi Hoshino Team Principal / Driver
    自身の夢でもあったル・マン24時間レースに参戦することができ、本当に幸せな気持ちでした。しかもクラスのポールポジションという、本当に最高のポジションからスタートすることができ、素晴らしいレースのスタートになったと思います。ただ、残念ながらレースではアクシデントが続き規定の時間を走りきることが困難になってしまい、チームと相談した結果、リタイアする選択をせざるを得ませんでした。非常に無念で、悔しい気持ちでいっぱいですが、自分の人生でも最高の経験ができたと思います。これを糧にして、また次のステップに進みたいと思っています。

    佐々木主浩
    Kazuhiro Sasaki General Manager
    今回は私も日本から応援に来ました。パトリック・デンプシーさんにもお会いしましたが、私のこともご存知だったのがうれしいですね。そして、ル・マン24時間レースという独特の雰囲気は本当に圧倒されました。長く伝統があり、世界的なモータースポーツイベントであることを実感しましたね。今回、星野敏選手がこの舞台に挑戦したことは日本のジェントルマンドライバーとして本当に素晴らしいチャレンジだったと思います。残念ながら完走することはかないませんでしたが、この経験はかけがえのないものになると思います。

    パトリック・デンプシー
    Patrick Dempsey Dempsey Proton Racing co-owner
    レースは自分の限界に挑戦し、それを確認するひとり旅です。ル・マン24時間はその典型的なもので、皆がそれを体験するためにここに集まってくるのです。成功するときもあれば、失敗するときもあります。そして、失敗のなかには成長があります。人生と同じで、それこそがレースを戦う素晴らしさなのです。今回の挑戦の失敗は不運であり、とても残念ですが、現実として受け止めて前に進んでください。あまり自分を責めないように。星野選手は夢をもって、それをつかみにル・マンに来たのです。日本に帰って、改善できる点は改善し、またこの場所に戻って来てください。

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    ル・マン24時間に挑んだ星野敏と木村武史

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