GT500テクニカルレビュー・ホンダNSX-GT編『“勝ち技”を守り、貫いた最速』【2023スーパーGT総集編】

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By Auto News on Dec 8, 2023 at 7:33 PM
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     2023年シーズン、GT500クラスで採用された非化石燃料のハルターマン・カーレス社製のカーボンニュートラルフューエル(CNF)。従来のハイオクガソリン同等まで出力変換効率とパワーの水準を回復させたという、トヨタGRスープラGT500、ニッサンZ GT500、ホンダNSX-GT、それぞれの技術力に迫る。

     12月1日発売のauto sport臨時増刊『2023-2024 スーパーGT公式ガイドブック総集編』では、3メーカーの車両技術を解説。ここでは、2023年がラストシーズンとなったホンダNSX-GT編の一部を抜粋してお届けする。

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     ホンダのGTプロジェクトリーダーを務め、エンジン開発を率いる佐伯昌浩氏によれば、2023年のNSX-GTは無理に最高速を追い求めるのではなく、しっかりダウンフォースを出す考えでまとめられた。

    「特にニスモさんのZはストレートが速い。そこに対抗するのではなく、我々はしっかりダウンフォースを出し、タイヤのデグラデーションを引き延ばして勝ちきる。そういう考えで、もう一段熟成を図りました。エンジンに関しては2023年からカーボンニュートラル燃料に替わりました。CNFへの適合を行ないつつ、さらにどこまで取り出せるかを徹底して追求し、開発を進めました」

     狙いどおりの成果を引き寄せた面と、そうでない面があった。「開発の成果は予選結果に表れたと思っています。2台のときもありましたが、ほぼすべての予選で3台以上、(15台中8台が進出する)Q2に進みました。5台すべてのNSXがQ2に残ったイベントが(8戦中)2回ありました。速さの面ではしっかり出し切れたであろうと考えています」

     一方で、予選の結果をレース結果に結びつけることができたとは言いづらい面もあった。「単独で走る予選では気持ち良く走ってもらえたと思います。速いクルマではあるのですが、(450kmレースが増えたこともあり、より)セミ耐久みたいなレースになったときに、ドライバーさんに対して負担をかけたクルマではあったのかなと思っています」

     最高速を追求できればそれに越したことはないが、“勝ち技”をどこに定めるかはベースのクルマが持つキャラクターに左右される部分がある。他社のように2ドアスポーツカーではなく、NSXのようなミッドシップのスーパーカーがベースの場合、車幅の広さが災いし、スケーリングした際にどうしてもドラッグが増えがちになる。「最高速はエンジンパワーだけでは補えない」と佐伯氏。

     最高速が伸びないとストレートエンドでアクセルペダルを戻すコースティングによる燃費節減効果も薄くなるし、後ろに速いクルマがいればコースティングがしづらくなって、なおさら燃費で追い込まれることになる。相手のタイヤがタレれば追い抜くチャンスは訪れるが、そこまで待つのはなかなかのストレスだ。

     GT300クラスも速くなっているので、追い越しが以前にも増してシビアになっており、しっかり踏み込む(ということは燃料を使う)必要がある。より、神経を使う。前出の「ドライバーに負担をかけた」という発言の中身は、別クラスを追い抜く難しさも含まれている。

    ■空力の“使いこなし”に注力


     レース中のペナルティが多かったり、クラッシュがあったり、ドライバーの体調面や怪我の影響で欠場を強いられたりといった出来事がレース結果に影響し、それがポイントランキングに跳ね返った面もあった。

     技術規則が安定して各社が車両の熟成を重ねていくと、パフォーマンスは高くなるのと引き換えに、乗りこなしは難しくなる。わずかなセットアップの差で優劣が生じるし、どこかのセッションで走行機会を失うと、それが週末すべてに悪影響を及ぼしてしまう。高度に熟成された車両にありがちで、代役がポンと乗ってレギュラードライバー並みにパフォーマンスを引き出すのは難しい状況だ。

    「エンジンも含めて車両側のハードで少し上回るものを開発し、チームさんに提供することはできました。ただ『掘れば掘るほど出てくる』時期は終わって、性能は本当に小さなところで競い合っています。あとはそれをいかに使いこなすかです。全車で使いこなすようにすれば、シーズントータルで見たときの成績は上がる。そこに注力しました」

     車両開発を担当する徃西友宏氏は、こう説明する。“使いこなし”に注力したが、不可抗力もあり、HRC陣営が狙ったポイントランキングにならなかったということだ。では具体的にどこに注力したのだろうか。

    「ベース車をタイプSに変更した2022年モデルは、シーズン終盤に一部の車両で非常にいいパフォーマンスが出せるようになりました。2023年に向けてはそのクルマの使い方を、他のチームに展開しようと取り組みました」

     詳細はノウハウなので非公表だが、その『使い方』は空力を指す。「最も性能に寄与するのは空力なので、具体的には空力の使い方です。チームのエンジニアさんにセットアップの意図をしっかり理解してもらったうえで、実際に自分たちのクルマで試して実感してもらい、浸透させました」

     全体を底上げし、高いレベルで走らせるためだ。開幕前の段階で浸透させるだけでは不充分で、シーズンが始まってからもチェックと方向性の確認を行なう必要がある。なぜなら、現場のコンディションに合わせてアジャストしていくうち、本来の狙いから外れたところでまとまってしまう可能性があるからだ。

     チームやドライバーは『走りやすくなっている』と感じていたとしても、実は空力的なスイートスポットから外れたところでまとまっている可能性がある。そうなると、走りやすいが速くない状態になってしまい、成績の底上げには結びつかない。

     そこで、空力エンジニアを現場に帯同させることにした。2022年まではオフシーズンのテストに帯同させることはあったが、シーズン中は開発拠点に居残ったという。翌年の開発に重点的に取り組むためである。

    「昨年の段階でいいレベルまで到達している実感はありました。2023年はその先が必要だと判断しました。そこでラウンドがかなり進むところまでサポート態勢を維持し、調子の出ないクルマに対して『セッティングの方向性をこう変えると良くなるはず』と推奨するようにしたのです。チームのエンジニアさんはタイヤ選びやサスペンションも含めて総合的にセットアップしていく。ただ、空力の使いこなしが外れたままだと、最終的には結構な差になる。我々の取り組みは頼りにしてもらえたし、うまくいったと思います」

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    『2023-2024 スーパーGT公式ガイドブック総集編』では、この他にもトヨタGRスープラGT500編『積み重ねた0.1PSの高感度』、ニッサンZ GT500『完全燃焼へ、見えたバランス』も収録されている。
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    『2023-2024 スーパーGT公式ガイドブック総集編』トヨタGRスープラGT500編『積み重ねた0.1PSの高感度』
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    『2023-2024 スーパーGT公式ガイドブック総集編』ニッサンZ GT500『完全燃焼へ、見えたバランス』
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